レースは、トップ2台が別次元の速さで後続を引き離している。
尊師杉山[2]は4番手以降を押さえて走っているが、全くタイムが上がらない。今年のレースも優勝からは遠いのか・・・と思った矢先、その尊師杉山[2]が後続に次々に抜かれていき、緊急ピットインしてきた。低速からの立ち上がりが酷いようで、どうにもならないらしい。とりあえずキャブレターのLoを開けて送り出すが、何度やっても同じ症状になって戻ってくる。これは、走りながらのチェックが必要だと言うことで急遽私がドライ[3]ブすることになった。
走り出してすぐに気が付いたのは、なんとも力がないことである。インテークの向きを変えたり、空気の流入量を手で変えてみたりいろいろと試すが全く改善しない。
一旦マシン[5]をスタンドに上げて、キャブのバラシとフィルターの交換を試してみる。その間に、データロガーからデータを吸い出しておく。
キャブには問題がないようだ。再びコースインするが、数周で同じ症状が出てしまう。
その他に考えられるのは、ピストン・シリンダーの不調、または組み合わせミスということだ。予備として持っていたオーバーサイズのシリンダー・ピストン類を組み込む決意をする。
これからの時間、ただただ我慢をして中途半端な順位になりたくなかったのである。
帰ってきたマシン[5]の症状は、想像とは違っていた。あんなにリッチにしたキャブなのに、ピストンクラウンはかなりの焼け気味。もちろん、プラグも焼けている。ピストン・シリンダー交換と同時に、再度キャブの点検と、リードバルブの交換、ガスケットの点検をする。
慣らし走行を数周入れて走行させるが、結局全開走行後、症状が再発してしまう。
先程の解析データは回転数が低いことを示している。もう一度ピットインさせて、ウェイトローラーの交換を行い、変速域を変えることを決意する。手慣れた作業ではあるが、15分ぐらいはかかってしまう。
回転数を上げたことによって、問題の低回転域からは逃げられるだろう。しかし、一般的にはスピードが上がらない状態になってしまう。もうここまで来るとストレスのある走行をしたくないと言うのが本音なのだ。
送り出したマシン[5]はしばらくは、加速不良も改善しペースが上がる。カリスマ溶接師春名がベストラップを更新しながら力強い走行が続いていく。メインストレートで左足の付近を気にしているがワイヤーでも引っかかっているのだろうか。しかし、タイムは安定している。
ちょうど子供が応援に来ていて、それに応えているかのようだ。少し安心して、一旦放送ブースに戻ることにする。
しかし、今回最大のトラブルの芽は、この時徐々にマシン[5]上で成長していたのである。
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