「今年も8耐の季節がやってきた」
もうこの言い方をしてもおかしくないくらい定着してきた。
また何日もかけてマシンに手を入れることになる。
8月24日の2時間耐久、フリー走行でエンジンが抱き付き気味になる。
原因はキャブセットを確認しなかったからなのだが、その後そこそこのタイムで走れたので
ピストン交換ぐらいでよいだろうと考えていた。
が。。。甘かった・・・なんと、、、完全な焼き付きだった。
ピストンとシリンダーには大きな傷が付き、2位に入れたこと自体が不思議な状態。
とりあえず、シリンダーとピストンを新品にして慣らしを始める。
久しぶりのノーマルサイズだが、ここで驚愕の事実が判明する。
なんと、0.5オーバーのピストンは、STDより4g「も」重かったのである。
今回は新しいパーツをもう1つ採用した。
カメレオンファクトリーのハイパーシーブの新型である。
軽量化されただけではなく、ワイドレンジになりベルトも今まで以上に外側に移動する。
そのかわり、ベルトの当たり面の角度が変わる。
ここで問題になるのは、
ロング化された駆動系はスプロケットとどの様な関係になるか?という点と
それに伴うウェイトローラーの重量である。
これは実走してみない限り判らない。
前日、古いタイアのままタイムを見てみる。
「古い」と一口に言うがこれがものすごいのだ。実は8耐を2度走っているのだ。
もうグリップするとかしないのレベルではない。
だから、ウェイトセッティングとスプロケ選択のためだけに使い、
その後の2セット走行で新タイアを試すつもりだった。
ウチのマシンは、普通より若干ロングの52Tスプロケットを使っている。これが
やはり50Tのほうがいい感じなのだ。セット的にはこれで決定とする。
あとは、新タイアだと思ってエンジンマウントを弄っていると「ぱん!」という嫌な音が響いた。
マウントのネジ山が切れてしまったのだ。
この修理に掛かりニュータイアは試すことが出来なくなった。
他チームのラップタイムを見てみると、ウチよりも若干遅い感じがする。
なんと言ってもストレートが笑うぐらい速いのだ。
そして、古タイアの感触を知ってもらうために、最後のセッションで杉山が乗り込む。
明日当日になってニュータイアでの走行感が変わってしまうと、
それがタイアのせいなのかどうかの判断に迷いが出ると思い、現状を知っていてもらうために
走行してもらうのである。
帰ってきた杉山も同じような感覚らしいのだが、ついでに
「よくあんなタイアで走っていましたね」と感想を言われた。
あとは、当日のニュータイアによってインフィールドがどれだけ速くなるのか。
そしてストレート区間がどれだけ遅くなるのか。。。である。
今年のメンバーも昨年と同じ。尊師杉山と春名である。
ドライバーとして速さを持っているだけではなく、マシンに対しての知識もあり
遠慮無く意見が言い合える仲間なのである。
さて当日のタイムトライアル。
タイムは一気に1秒以上もあがる。ストレート区間は若干遅くなったが、
それをインフィールドで稼いでくるのである。
ということは、今までのタイアは酷すぎたと言うことだ。
杉山は「マシンは安定したね。でも、昨日の輝きはないな」と笑いながら言う。
予選は3番手のタイム。
これは実は私はあんまり嬉しくない。
最初のうち速くても8時間後には意味がないのだ。
ポールポジションには、元YAMAHAワークスの小野尾選手がいる #4チーム大名。
2番手には昨日、手計測で1秒台に入れている #1王子様が僅差で付ける。
私にはもう1つ心配事があった。昨日よりも回転数が低いのである。
そこで、今までは絶対に使わないウェイトセッティングにしてみる。
計算では7500rpmからのスタートになるはずである。
決勝レースに向けてあわただしくセット変更を始める。
(このあたりのデータは、後ほど公開予定。おたのしみに)
レースは快晴の元スタートを切った。
ウチのマシンはいつものように杉山がスタートドライバーをつとめる。
しかし加速が良くなく10番手あたりに落ちてしまう。
大混戦のまっただ中に入ってしまったのだ。
そしてなんと2周目に、
既に後方を引き離しに掛かっていた #1王子様が2コーナー先でマシンを止めてしまう。
状態から見てエンジントラブルのようだ。修復にはかなりの時間が掛かるだろう。
と考えている間に、今度はウチのマシンがZコーナーでスピンしている。
杉山は一旦降りてマシンの後方を持ち上げるがそのままグリーンにマシンを置いてしまった。
あわてて春名と一緒にマシンに駆け寄る。するとチェーンが外れただけだったようなのだ。
その場で無理矢理チェーンを咬ませてコース復帰させる。
しかしこの時点で既に2周の遅れとなってしまった。
マシンの状態は心配だが、杉山のペースは元に戻りハイペースである。
チェーンの修復はルーティーンのピット作業まで延ばすことにする。
2台ほど抜いて杉山をピットに入れる。ここで給油の他にチェーンの修復をする。
ここでも2分以上のロスになる。
春名を送り出した後にタイミングモニターを見ると、14位。トップとは4周の差である。
どこまでリカバーしていけるかどうかに目標は変わっていった。
じわじわと順位を戻し、10位まであがる春名。依然としてトップとの差は大きい。
ここまでの4台はあまりペースが速くない。ここから上はなかなか大変である。
そして私がコースインするが、マシンの調子は非常によい。
どんなマシンでも抜いていける勢いがある。
トップと3周差の8位にあがったところでドライバーチェンジを行う。
一旦9位に落ちるが杉山のペースは衰えず、目の前のマシンをどんどん抜いていく。
まもなく杉山にピットインのサインを出そうというところで
6位のマシンが目の前にいることに気が付いた。
SUGOカートコースの電光掲示板はトップ6の車番だけが表示される。
なんとか一瞬でも#93を表示させたくなり、杉山にGO!のサインを出す。
それに応える杉山が見事6のポジションに#93を表示させた。
しかし今度はあわててピットインの準備である。
春名が9番手でコースに復帰していく。
しばらく8番手を走行するが前の2台がピットインする間に5位まであがる。
この時もすぐにピットインの準備が必要となる。
私が7番手で復帰するが、このあたりからマシンの調子が気になり出す。
やはり回転があがらないのだ。
しかし、現状では他のチームもタイムが落ちてきている。
4番手のマシンがピットインして5番手に。
さらに、5番手と4番手のマシンをかわして、ついに4位まであがったのだ。
トライバーチェンジした杉山は6番手でコースに復帰する。やはりペースがあがらない。
しかし、マシンにムチを入れる杉山。トップ走行中の#9のピット作業が長引く。
それとほぼ同時に#11 をかわして数周ではあるが2位に#93を表示させる。
その後春名にドライバーチェンジをするが、ペースはなかなかあがらない。
他チームがピットインする間に5位にあがるが、ここから先はかなり辛いだろう。
杉山には無理を言って次のスティントを走ってもらう。私がチェッカーを受けるためだ。
その間に、そこまで好調に走っていたGX200 の#11 が走行時間オーバーのペナルティで
順位を大きく下げる。
#4のピットインで再び3位にあがるが、こちらもピットインが必要となる時間。
結果はトップと3周差の4位。
レースには「たら・れば」は禁物だという。それは結果でいえばその通りだ。
しかし、その「たら・れば」があればこそ、次のレースが生きてくる。
「たら・れば」すら無いので有れば、もう可能性は無い。
どんなチームにも、いろいろな形の「たら・れば」が有るはずだ。
土曜日に燃費計算が出来れば・・・
土曜日にニュータイアのテストが出来れば・・・
土曜日にマウントのトラブルがなければ・・・
チェーンの応急処置がすぐに出来れば・・・
まだまだQ!!Maru8耐は、多くの障害を用意してくれているのである。
さて、今回のレースでは、なんと全車のラップタイムを入手できた。
それを元にした完全レース順位グラフがこれである。
縦の軸は、優勝チームの平均ラップタイムを
66.5秒(ピット作業含む)として、その累積に対しての差である。
プラス側は速いと言うことである。
右上がりが強ければ強いほど、66.5秒より速い周回を重ねている訳だ。
横の軸は周回数としたので
同一周回数になった時点での時間差が判る。
SUGOの1周は約60秒と考えると
高さの差の1目盛が周回の差となる。
最大はデータから240秒として
最低はグラフ描写の関係から300秒、
つまり約5周である。
これを見ると、いろいろなことが判ってくる。
まず、#9のリードは、ラップタイムというよりは
ピット作業時間によるものが大きかった。
かなり燃費が良いようで、2スティントで給油を行っていたのではないか?
そのかわり1回の給油時間が長くなっている。
同様にGX200 の#11 も燃費でピット作業時間を稼いでいる。
#92と#69は220周頃にタイア交換を行ったようだ。
しかし、ラップタイム的にみると、これはあまり功を奏していない。
途中で大きく落ち込んだグラフがあるが
これが「たら・れば」である。
主に、無駄なピット作業になった部分や
スティント時間のオーバーによるペナルティである。
そんな「たら・れば」を考慮したグラフが下のグラフである。
トップチームと、修正したチームは太い線にしてある。
#9 は、最初のトラブルによるピット作業は修正したが
最後の方の長く止まった部分などはそのままにした。
これを修正するとなると、ラップタイムが判らないのである。
#7 は5周減算とライトトラブルのピットストップ。
#11は5周減算部分。
#93はチェーンはずれによって止まった部分と
その修正のピット作業時間である。
各チームとも最後の数周分は、直前の平均ラップを使って埋めた。
これを見てどう思うだろうか?
もちろん、#9にしてみれば、330周あたりで見てみると
2番手に2周差、3番手には3周以上の差を付けるのだから
その後ペースを落としてトラブルが無かったかも知れない。
#7も最終スティントで別のドライバーが走っているかも知れない。
チームの数だけドラマがあったはずだ。
そして、これを見る限り、その想いが想像できる。
8耐に勝つということは、並大抵ではない。
それだけ、難しいレースなのだ。
ついでに、各マシンのラップタイム変化をグラフにしておく。
来年の参考になれば・・・