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正直言って、私は耐久レースが怖い。 今までスプリントでは何度も優勝しているが、 耐久レースでは、たった2回しか優勝していないのだ。 それは、同じチームのメンバーにも申し訳ないことになる。 そして、ウチのチーム監督から「今回はきちんと整備してね。」 とダメ出しを喰らう。 そう。。。いつもレース直前しか触っていないマシン。 前回のレース(スプリント)前にエンジンのフルオーバーホールを敢行。 しかし、テストとなったレースでは雨が降ったためにデータが取れない。 エンジンが不調なのかセッティングが不味いのか 気候のせいなのか、路面のせいなのか、人のせいなのか。。。 全く判らなくなっていたのである。 |
ただ、ここまでで2つほど判明したことがあった。 ベストラップを狙ったセッティングでは時間と共にエンジンの出力低下で かなりのペースダウンになってしまうこと。 だから、このタレたエンジン出力に照準を合わせてセッティングしないと タイムがどんどん落ちるのである。 もう一つは雨のセッションでの無限PK50改のパフォーマンスが良いこと。 もしかしたら、本人達は気が付いていないのかも知れないが 低速での吹けあがり重視になっているみたいなのだ。 |
決勝の朝は雨は上がっているもののウェット路面である。 いつコンディションが変わってもおかしくない状況である。 8耐ではTTが2度行われる。 久しぶりのカート走行になるブン仲井にステアリングを託す。 3周した時点でいきなりのトップタイム。 そこで彼をピットに呼び入れる。タイア交換も見据えてのことである。 ピットに入ってきた彼に「トップタイムだから様子見よう」と言うと 「うそでしょ!?」 彼は、発信器の番号をゼッケンと間違えていたらしく 電光掲示板を見ながら 「何秒なんだろう?あ、ピットインサインだ。遅いんだろうな」 と考えていたらしい。 |
スタート時点ではコースはラインドライ状態。 このまま乾いていってくれればかなり楽な展開になるだろう。 ラム吸気もデータ取りが済んでおり、今までの悩みが一気に確信へと変わる。 スタートドライバーはブン仲井。 実は内緒にしていたのだが、 彼のパフォーマンスがこれほどだとは予想していなかった。 |
安心してスタートを任せることが出来る。 スタートで順位を1つ上げトップ争いとなる。 が、3周目でトップに立つとかなり良いペースで飛ばし始める。 ペースが落ちる場面もあったが2位がミスする間に間隔は広がり 展開はかなり楽になりそうだ。 |
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しかし、ドラマはまだ始まったばかりだったのである。 第2ドライバーの尊師杉山は次の周にトップに返り咲く。 その10分後に、立ちこめていた霧がついに雨に変わるのだった。 |
第3ドライバーの帝王堀籠にドライバーチェンジ。 雨カバーを付けるのと同時にタイアのエア圧を上げる。 そして、キャブ調整をするのだがこれが裏目に出る。 コースインしてすぐにエンジンの異変に気が付く。 低速のパワーが全くないのである。薄いのか?濃いのか? 一か八か絞ってみるがこれが大失敗。再びピットにはいるがまだ薄いようだ。 恒例の帝王片手運転が始まる。 当然ラップタイムは安定せず3位まで落ちてしまう。 |
帝王堀籠のスティントでチームはフロントレインタイアのみの交換を決行。 これが堀籠好みのオーバーセッティングとなりペースが上がる。 しかし、他のマシンのペースに追いつくだけで 順位を入れ替えるところまでは行かない。 ここから先はエンジンを騙しながらペースを維持するだけになる。 |
ウチのチームはどうだったんだろう? 走りながらいろいろなことを考える。 ブン仲井も尊師杉山もドライバーとしてもメカニックとしても信頼できる。 それ以上に、チーム監督の私の妻も我々以上に先回りして準備してくれている。 ガソリンの準備やら食事の心配まで。 レースというのはドライバーだけが注目されがちだが それはチームがあってこそなのである。 もちろん、派閥になるようなチームを組織するつもりはない。 しかし、彼ら彼女たちはプロフェッショナルである。 そして、どのチームも一丸となって8耐を戦ってくれているのだ。 |